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経営革新のメリット・デメリット― 成長のチャンスとその裏にある現実 ―

作成日:2026.02.13

ラ・ポールの徹底解説vol.1(2/4)

3.経営革新が生む“資金調達・金融機関評価”へのメリット ― お金の流れが変わると、経営の自由度は一気に広がる

中小企業経営において、「お金」は常に最重要テーマの一つです。どれほど良い商品やサービスを持っていても、資金が回らなければ会社は存続できません。そして多くの経営者が、資金調達に関して「銀行は厳しい」「どうせうちは評価されない」「実績がないから無理だ」といった諦めにも似た感情を抱いています。しかし、実務の現場で数多くの企業を見てきた中で断言できるのは、経営革新に取り組んだ企業ほど、金融機関との関係性と資金調達環境は劇的に変わるという事実です。

金融機関が企業を見る際、表面的には「売上」「利益」「自己資本比率」「借入残高」といった数字が重視されているように感じられがちです。しかし実際には、それ以上に重要視されているのが、「この会社はこれから伸びるのか」
「変化に対応できるのか」
「経営者は将来をどう描いているのか」
という、いわば“未来への姿勢”です。経営革新に本気で取り組んでいる企業は、この「未来志向」の評価軸において、圧倒的に有利な立場に立つことができます。

経営革新に取り組む企業の多くは、単なる現状維持ではなく、「どの市場で、どんな価値を、どのように提供していくのか」という中長期の方向性を明確に持っています。そして、その実現のために、新商品開発、デジタル化、組織改革、販路拡大など、具体的な行動を伴っています。金融機関が最も評価するのは、まさに「構想だけで終わらず、すでに動き出しているかどうか」という点なのです。

例えば、これまで売上が横ばいだった企業でも、経営革新によって新たな収益の柱が生まれ始めた段階で、「この会社は伸びる可能性がある」と評価されるようになります。最初は小さな実績であっても、「市場が拡大している分野に挑戦している」「付加価値の高いビジネスモデルに転換しつつある」「社内体制が整い始めている」といった要素が揃えば、金融機関の見る目は確実に変わっていきます。

実際、経営革新に成功している企業ほど、「お金の借りやすさ」が大きく変化します。
これまで「返済能力」ばかりを厳しく見られていた企業が、「成長のための資金」として前向きな融資提案を受けるようになるケースも少なくありません。設備投資、新事業立ち上げ、M&A、人材採用など、これまで“お金がないからできなかったこと”が、現実的な選択肢として上がってくるようになるのです。これは、単なる資金調達のしやすさ以上に、経営の自由度そのものが拡張されることを意味しています。

さらに、経営革新は「補助金・助成金」との相性も極めて良いという特徴があります。
国や自治体が用意している多くの補助金・助成金は、「生産性向上」「新分野進出」「DX推進」「事業再構築」「人材育成」といった、まさに経営革新そのものをテーマにしています。日頃から革新に取り組んでいる企業ほど、こうした制度に自然と適合しやすく、採択率も高くなる傾向があります。結果として、自己資金だけでは難しかった大型投資や新規プロジェクトにも、現実味が帯びてくるのです。

また、経営革新は資金調達の「質」も大きく変えます。
単なる短期資金や運転資金の借入ではなく、**中長期で事業成長を支える“戦略的な融資”**を受けられるようになると、会社の資金繰りは一気に安定感を増します。返済期間に余裕が生まれれば、月々の資金流出は抑えられ、経営者はより本質的な経営判断に集中できるようになります。目先の支払いに追われる状態から、「次の一手」を考える余裕が生まれる――これは経営において、極めて大きな意味を持ちます。

さらに見逃せないのが、金融機関との“関係性”そのものが変化するという点です。
経営革新に取り組み、事業計画を持ち、定期的に状況を説明している企業は、金融機関にとって「一緒に成長していくパートナー」という位置づけに変わっていきます。単なる“お金の貸し手と借り手”の関係から、“経営を支える伴走者”へと関係性が進化するのです。この関係性が築けた企業は、経営環境が厳しくなった局面でも、早めに相談し、柔軟な条件変更や追加支援を受けやすくなります。

一方で、経営革新を行わず、現状維持のまま数字が悪化していく企業は、金融機関から「先行きが見えない企業」と判断されやすくなります。その結果、融資条件は厳しくなり、資金調達はますます難しくなっていく――こうした負のスパイラルに陥るケースも少なくありません。
つまり、経営革新は“資金調達の武器”であると同時に、“資金繰り悪化を防ぐ最大の防波堤”でもあるのです。

経営革新によって得られる資金調達面の最大のメリットは、「お金を借りられること」そのものではありません。
それは――
「お金の心配に振り回されず、経営そのものに集中できる環境を手に入れられること」。 この状態に入った企業は、戦略の実行スピードが一気に上がり、競争力そのものが次のステージへと引き上げられていきます。

4.経営革新のデメリット① ― 失敗リスクと資金的ダメージという現実

ここまで、経営革新がもたらす数々の「メリット」についてお伝えしてきました。売上や利益の向上、組織の活性化、資金調達環境の改善など、どれを取っても経営者にとっては非常に魅力的な要素ばかりです。しかし、ここで必ず押さえておかなければならないのが、経営革新は常に「失敗リスク」と「資金的ダメージ」を伴う挑戦でもあるという厳しい現実です。

経営革新は、これまでのやり方を意図的に崩し、新しい領域へ踏み出す行為です。そこには必ず「未知」が存在し、どれほど入念に準備をしても、思い通りの結果にならない可能性はゼロにはなりません。むしろ、経営革新に挑戦した企業の中には、一定数、途中で資金が尽きてしまう、あるいは元の姿に戻ることすら困難になるケースも存在します。この「失敗の可能性」を正しく理解せず、メリットだけを見て突き進むことこそが、最も危険な経営判断だと言えるでしょう。

経営革新で最も大きな打撃となりやすいのが、初期投資に伴う資金負担です。 新規事業の立ち上げ、新商品開発、設備投資、システム導入、人材採用――どの分野であっても、革新に踏み出す瞬間には、必ずまとまった資金が必要になります。しかも、この投資は「いつ、どれだけ回収できるのか」が事前に明確でないケースがほとんどです。最初の数か月、あるいは1年、2年と赤字が続くことも決して珍しくありません。 この期間を「耐え切れるかどうか」が、経営革新の成否を大きく左右します。

十分な運転資金を確保せずに革新に踏み出してしまうと、思うように成果が出ないまま資金繰りが悪化し、結果的に本業そのものまで圧迫してしまう――こうした例は、実務の現場では決して少なくありません。特に中小企業は、もともとの資金体力が潤沢ではないため、一度の判断ミスが致命傷になるリスクを常に抱えていることを、冷静に認識する必要があります。

また、経営革新の失敗は、「お金」だけでなく「信用」にも大きなダメージを与えます。 金融機関から革新資金を借り入れていた場合、計画通りに進まなければ追加融資は難しくなります。取引先に対しても、「あの会社は新しいことに挑戦して失敗した」というイメージが広がる可能性があります。さらには、社員に対しても、「会社の判断は信用できない」という不信感を生み出してしまうこともあります。これは、単なる赤字以上に回復が難しい“無形の損失”だと言えるでしょう。
特に注意すべきなのが、「過去の成功体験の延長線」で経営革新を考えてしまう危険性です。

これまでの事業で成功していた経営者ほど、「今回もうまくいくはずだ」「自分の経験があれば大丈夫だ」と、無意識のうちにリスクを過小評価してしまう傾向があります。しかし、経営革新とは本質的に「これまでとは違う世界」に踏み込む行為です。過去の成功パターンが、まったく通用しない場面に直面することも少なくありません。このギャップが大きいほど、失敗したときのダメージもまた、大きくなりがちです。

さらに、経営革新は「途中で引き返すことが難しい」という側面も持っています。 例えば、新規事業のために大きな設備投資を行った場合、それを簡単に元に戻すことはできません。人材を新たに採用した場合、その雇用責任は長期的に続きます。つまり、経営革新とは「後戻りできない選択」を積み重ねていくプロセスでもあるのです。この覚悟を持たずに進めてしまうと、「想定と違ったからやめよう」という判断ができず、損失だけが膨らみ続ける危険性があります。

また、もう一つ現実として見逃せないのが、経営革新は必ずしも“成功事例の通り”には進まないという点です。
世の中には数多くの成功事例が紹介されています。しかし、その裏には、表に出てこない何倍、何十倍もの失敗事例が存在します。成功事例だけをなぞるように計画を立て、「あの会社もできたから、うちもできるはずだ」と考えることほど、危うい判断はありません。業界、立地、資金力、人材、経営者の資質――同じ条件の企業は一つとして存在しないからです。
だからこそ、経営革新に挑戦する際には、「最悪のシナリオ」を必ず想定しておくことが極めて重要になります。

最初の1年、まったく成果が出なかったらどうするのか。
予定していた売上の半分にも届かなかったら、どこで撤退するのか。
追加投資が必要になった場合、どこまで資金を投入できるのか。
こうした「撤退基準」「許容損失ライン」を事前に決めておくことが、経営者自身と会社を守る最大の防御策になります。

経営革新のデメリットを正面から見据えることは、決して後ろ向きな行為ではありません。
むしろ、リスクを正しく理解している経営者ほど、経営革新の成功確率は高いというのが、実務における現実です。勢いだけで突き進む経営と、最悪の事態まで想定したうえで進む経営とでは、同じ「挑戦」であっても、その質はまったく異なります。
経営革新は、会社を飛躍させる大きなチャンスであると同時に、一歩間違えれば、会社の命運そのものを左右する「大きな賭け」でもあります。
この二面性をしっかりと受け止めたうえでこそ、次の章でお伝えする“もう一つの重大なデメリット”にも、適切に向き合う準備が整うのです。