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経営革新のメリット・デメリット― 成長のチャンスとその裏にある現実 ―

作成日:2026.02.13

ラ・ポールの徹底解説vol.1(1/4)

経営革新のメリット・デメリット― 成長のチャンスとその裏にある現実 ―

株式会社ラ・ポールのコラムをご覧になっていただきありがとうございます。 近年、「経営革新」という言葉は、中小企業経営の現場においても頻繁に使われるようになりました。新規事業への挑戦、業務のデジタル化、組織改革、事業承継とセットで行われる体制変更など、その形は多岐にわたります。売上の停滞、人材不足、競争激化といった悩みを抱える企業にとって、経営革新はまさに“突破口”のように語られることも少なくありません。

しかし一方で、経営革新は「やれば必ず成功する魔法の手段」ではありません。企業の体質や市場環境、経営者の覚悟、社員との信頼関係など、さまざまな要素が絡み合う中で、成功に至る企業もあれば、逆に混乱を深めてしまう企業も存在します。 本コラムでは、経営革新の「メリット」と「デメリット」の両面を、実務の視点から丁寧に掘り下げていきます。理想論だけではなく、現実に起こり得るリスクも含めて正しく理解することで、より確かな経営判断につなげていただくことが目的です。 まず第1章では、経営革新によって企業が得られる最も大きな恩恵ともいえる、「成長と収益力の向上」というメリットについて、深く考えていきます。

1.経営革新最大のメリット ― 売上・利益・企業価値が根本から変わる

経営革新の最大のメリットは、何と言っても「企業の成長スピードと収益構造そのものが変わる可能性を持っている」という点にあります。多くの中小企業は、長年にわたって同じ事業モデル、同じ取引先、同じ価格帯の中で経営を続けてきます。その結果、売上はある程度安定するものの、大きな伸びは期待できず、原材料費や人件費が上昇すれば、利益は年々圧迫されていく――こうした“緩やかな衰退”の状態に陥っているケースも少なくありません。
経営革新とは、この構造そのものにメスを入れる行為です。 新たな商品・サービスの開発、新市場への進出、価格戦略の転換、業務プロセスの見直しなどを通じて、これまでとはまったく異なる収益の流れを生み出していきます。これがうまく機能したとき、売上の伸び方、利益率、そして企業全体の体力は、従来とはまったく別次元のものへと変わっていきます。
例えば、これまで「薄利多売」型で苦しんできた製造業が、自社ブランド商品を開発し、高付加価値路線へ転換した結果、売上はそれほど増えていないにもかかわらず、利益は数倍に跳ね上がる――こうした事例は決して珍しくありません。あるいは、地域限定で展開していたサービス業が、オンライン化によって全国から顧客を獲得できるようになり、一気に市場そのものが広がるケースもあります。

このように経営革新は、「同じ努力量でも、得られる成果の大きさがまったく異なる世界」へと会社を押し上げていく力を持っています。
さらに重要なのは、企業価値そのものが大きく変わるという点です。
経営革新によって収益構造が改善し、将来性のある事業モデルが確立されると、金融機関の評価は大きく変わります。単なる「売上がある会社」から、「成長性が期待できる会社」へと評価軸がシフトしていくのです。その結果、融資条件の改善、資金調達の選択肢の拡大、取引先からの信頼度の向上といった、数値では測りきれない“信用力”が蓄積されていきます。

この信用力の積み重ねは、次なる経営判断にも大きな影響を及ぼします。新たな設備投資、新規事業への挑戦、人材採用――これらすべてにおいて、選択肢が広がり、「攻めの経営」が可能になるのです。経営革新は単なる一時的な改革ではなく、企業が“チャレンジできる体質”へと生まれ変わるプロセスでもあると言えるでしょう。
また、経営革新の成功は、社内にも大きな好循環をもたらします。
売上や利益が改善し、会社の将来像が明確になることで、社員の意識は大きく変化していきます。「この会社はこのまま続くのか」という漠然とした不安が、「ここで成長していける」という期待へと変わる瞬間です。社員が前向きに仕事へ向き合うようになると、自発的な改善提案、新たな挑戦、組織全体の生産性向上へと連鎖的な変化が生まれます。
つまり、経営革新は「数字」だけでなく、「人の意識」までも根本から変える力を持っているのです。

一方で、この大きなメリットの裏側には、それに見合うだけの覚悟と準備が求められます。経営革新は、必ずしも短期間で成果が出るものではなく、途中で苦しい局面に直面することも少なくありません。しかし、それでもなお挑戦する価値があるのは、成功したときのリターンが、企業の未来を根本から変えるほどに大きいからに他なりません。
経営革新の最大のメリットとは、単なる売上アップではなく、
「企業が自らの意思で成長の方向性を選び取れる存在になること」
これこそが、中小企業にとって最も本質的な恩恵であり、経営革新に挑む最大の理由なのです。

2.経営革新がもたらす“組織と人材”へのメリット ― 人が動き、組織が生まれ変わる瞬間

経営革新というと、多くの経営者は「売上」「利益」「商品」「事業転換」といった“数字で測れる変化”を真っ先に思い浮かべます。しかし実務の現場において、経営革新がもたらす最大級の変化は、実は「人」と「組織」そのものの変化であると言っても過言ではありません。どれほど優れた戦略を描いても、それを実行するのはあくまで“人”であり、組織の空気が変わらなければ、本当の意味での経営革新は完成しないからです。

多くの中小企業は、長年にわたって同じやり方、同じメンバー、同じ価値観の中で経営を続けてきます。それ自体は決して悪いことではありませんが、環境が変化する中で、次第に「変化を嫌う空気」「挑戦を避ける風土」「失敗を許容しない文化」が根付いてしまうことも少なくありません。こうした組織では、新しいアイデアが生まれにくく、若手は意見を言わなくなり、結果として組織全体が“内向き”になっていきます。
経営革新に本気で取り組み始めると、この空気が一気に揺さぶられます。

新事業への挑戦、業務のデジタル化、評価制度の見直し、働き方改革などを通じて、これまで「当たり前」だと思われていた前提条件が次々と書き換えられていくからです。最初は違和感や戸惑い、さらには反発が生まれることも珍しくありません。しかし、この“揺らぎ”こそが、組織が変わり始めたサインでもあります。

経営革新によって最も大きく変わるのは、社員一人ひとりの「仕事への向き合い方」です。
これまで「言われたことをやるだけ」「決められたことをこなすだけ」だった仕事が、「どうすればもっと良くなるか」「自分なら何ができるか」という問いへと変わり始めます。これは、経営者が明確に「変わる意思」を示し、「挑戦することを肯定する姿勢」を打ち出したときに、初めて生まれる変化です。
特に若手社員にとって、経営革新は大きな成長のチャンスとなります。

新しいプロジェクト、新規事業、新しい業務フローの設計など、これまで経験できなかった仕事に挑戦できる機会が一気に増えます。失敗も当然増えますが、その失敗が責められるのではなく、「次につなげる学び」として扱われるようになると、社員の行動は劇的に変わります。受け身だった社員が、自ら課題を見つけ、提案し、行動する“当事者”へと変化していくのです。

また、経営革新は評価制度や人事制度の見直しとセットで行われることが非常に多く、これが組織改革の加速装置になります。 「年功序列」「社長の主観」「何となく決まる昇給」――そうした曖昧な評価から脱却し、「何を頑張れば評価されるのか」「どんな成果を出せば成長できるのか」が可視化されると、社員は明確な目標を持って働けるようになります。これは、単なるモチベーション向上ではなく、組織全体の生産性と定着率を同時に引き上げる極めて重要な要素です。
さらに、経営革新によって“採用力”そのものが大きく変わる点も見逃せません。
人材不足に悩む中小企業の多くは、「給料を上げられないから人が来ない」「知名度がないから応募がない」と考えがちです。しかし実際には、「どんな会社なのかが伝わらない」「将来像が見えない」「成長できるイメージが湧かない」ことこそが、最大の障壁になっているケースが非常に多いのです。

経営革新によって、会社の方向性、ビジョン、挑戦している内容が明確になると、それ自体が強力な採用メッセージになります。「この会社は変わろうとしている」「ここでなら面白い経験ができそうだ」という期待感が、若い世代を中心に強く響くのです。実際、経営革新に成功している企業ほど、求人広告に多額の費用をかけなくても、自然と人材が集まりやすい傾向があります。

一方で、経営革新による組織変革は、必ずしも“全員が幸せになる”わけではありません。
変化についていけない人、変化を拒む人、これまでの価値観に強く縛られている人が、会社を去る選択をすることもあります。これは経営者にとって非常に苦しい現実ですが、見方を変えれば、「これまで曖昧だった方向性が明確になった結果」とも言えます。経営革新は、組織にとっての“選別”のプロセスでもあるのです。

しかし、こうした痛みを乗り越えた先にある組織は、驚くほど強く、しなやかになります。 ビジョンを共有し、挑戦を前提とし、失敗から学ぶ文化が根付いた組織は、環境変化に対して極めて柔軟です。市場が変わっても、商品が変わっても、「また次のやり方を考えよう」と自然に動ける集団へと進化していきます。これは、目先の利益以上に価値のある“組織資産”だと言えるでしょう。
経営革新のメリットとは、売上が伸びることでも、利益が増えることでも終わりません。
「人が育ち、組織が自走し始める」――この状態を手に入れた企業こそが、長期的に見て最も強い経営体質を手に入れた企業なのです。